vol.35

その日は店が終わってから新宿のラブホテルで
将来について語り合った。
「オレ、来月実家のある群馬に戻って
自動車整備工場をやろうと思うんだ」
ケンは普段から車関係の仕事をするのが夢だと言っていた。
その夢を二人で叶えようというわけである。

「3千万円あればすぐに始められる。
オレは今まで貯めた金が千5百万円ほど
あるからかをりが残りの千5百万円を出してくれないか? 」

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千5百万円といえば、いまのかをりにとって全財産である。
だが、その虎の子の金もケンとの幸せを築くためならちっとも惜しくはなかった。
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# by kb1986 | 2006-09-29 01:13 | 第三章 愛

vol 34

その日、店が終わってからいつものように
ケンの待つ歌舞伎町へ向かうと、
そこにはいつもより神妙な顔をしたケンがいた。
「ボクと結婚してくれないか」
「!! 」
かをり
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は突然のことに吃驚してしばらくは
声を発することができなかった。
そしてジワジワと喜びが心の底から湧き、
涙が溢れ出てくるのを感じた。待っていたのだ、
この瞬間を。

かをりは今、自分が世界で一番幸せ者ではないかと思った。
今までの苦労も今日のこの瞬間にすべて報われた。

と思った
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# by kb1986 | 2006-09-26 19:27

vol.33

ちなみには、かをり今まで生きてきた22年間で、
客以外の男に抱かれたことは一度もなかった。

つまりケンはかをりにとって、
客以外では初めての男というわけである。
ケンは優しいだけでなく、セックスもうまかった。
かをりは普段味わったことのない快感を何度も何度も堪能した。


そして、かをりにとって運命の日がやってきた。
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# by kb1986 | 2006-09-25 00:05 | 第三章 愛

vol32


ケンから「今月のノルマが足らないんだ」と言われれば、
飲みたくもない一本十万円のドンペリを何本も空けた。
「他のホストは持っているのに自分は持ってない」
と言われれば、ロレックスの時計も買ってあげたし、
イタリア製のスーツも新調してあげた。
当然ながら、そうなってくると日々の稼ぎだけでは
お金が足りなくなる。
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この頃、かをりは通常であれば一日で5~6人の客を
相手していたので、月の収入は最低でも2百万円はあったが、
そのほとんどを歌舞伎町の店…というよりケンに
貢いでいた。
そして最初3千万円あった貯金も半年の間だけで
半分の千5百万円に減っていたのであった。
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# by kb1986 | 2006-09-23 17:09

vol31

「ボクはこの店で頑張ってナンバーワンになるんだ、
だからかをりちゃんも応援してね」
そう言われ、少なからずも心動かされたかをりは、
それから歌舞伎町へと足しげく通うことになる。
別段それが危険な行為だとも思わなかった。
お店では由香さんを始め、
何人ものソープ嬢が息抜きと称してホストクラブ通いを続けていた。

時たま店の店長や主任から
「ホストクラブもほどほどにしておきなさいよ」
と、言われることはあったが、
そのために借金をしているわけでもなく、
自分が稼いだお金で通っているのだ。
誰にも文句を言われる筋合いなどはなかった。
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# by kb1986 | 2006-09-21 15:42 | 第三章 愛

vol30

「いらっしゃいませ」
ホストクラブ初体験のかをりにとっては何もかもが別世界であった。
世の中にこんな美味しいお酒を飲ませてくれる場所があったのか。

そして今までガサツで、金で女を抱くことしか頭にない
男ばかりを相手にしていたかをりにとっては来る男、
来る男そのすべてが素敵に見えた。
その中でもケンという男はとくにかをり
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のハートをつかんだ。

矢吹ケンというホストはルックスがメチャクチャいいと
いうわけではなかったが、聞き上手で、細かい気配りができる男だった。
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# by kb1986 | 2006-09-20 16:07 | 第二章 希望

vol29

 東京に出てから3ヶ月が過ぎようとした頃、
かをりの未来を左右するような出逢いが訪れる。
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ある日、お店がひけてから同僚の由香さんから
飲みに行かないかと誘われた。
決して付き合いのいい方ではないかをりであったが、
そう毎回断るのは忍びない。
そして由香に連れて行かれたのが歌舞伎町のホストクラブであった。
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# by kb1986 | 2006-09-19 18:42 | 第二章 希望

vol28

21歳で上京したかをりだが、今度は吉原のソープランドで勤務することになった。
ブランド物のバッグやアクセサリーなどもそこそこ買うようになってはいたが、
住んでいるのはお店で用意してくれた寮のマンション。
普通に借りれば敷金やら保証金がかかるので、
そんなところでとくに贅沢したいとも思わなかった。

むろん貯金が趣味というわけでもなかったが、
こんな仕事を続けられるのも若いときだけ。漠然とした
夢だったが、将来は自分で花屋とかコーヒーショップ
なんかができればいいな。と考え始めたのだ。
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# by kb1986 | 2006-09-19 03:42

vol27

東京・・・
それは想像していたよりも
ずっと、大きく、都会的で、魅力的で、そして人の多い場所だった。

かをりにとって本格的に一人暮らしをするのは初めて。
移り住んだのは、新宿区にある某マンション。
家賃は月12万円と高いが、保証金や敷金などがいらないことを
考えたらこんなものだろう。

この殺風景な部屋にどんな未来がまっているのかと
期待は弾むのだった・・・
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# by kb1986 | 2006-08-13 14:52

vol.26

もう温泉旅館に未練などはなかった。
すぐに出て行こうと決めた。
旅館を出るとき女将さんが「餞別だよ」と、
わたしてくれた封筒を開けると百万円の札束が入っていた。
貯金もすでに2百万円ほどあったので、
札幌での新生活も何の問題もなく始められる。
次の勤務先はすすきののソープランド。

かをりの入店したお店は1時間2万円以下の
大衆店ではあったが、面白いように客が入った。
やはりこういう店で二十歳未満というのは
客にとって魅力なのであろう。浪費癖もなく、
大した趣味も持っていないかをりの
預金通帳は見る見る金額が増えていく。
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それから3年後東京へと出て行く頃には3千万円という大金を手にしていた。
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# by kb1986 | 2006-07-20 13:34 | 第二章 希望

vol.25

「かをりちゃんももう18歳、今日で卒業や、今までお疲れさま」
 自分でもうれしいのか、
悲しいのかよくわからない複雑な心境だった。
とはいえ、これだけの労働をしていたらもっとお金を稼げる。
という世間的常識は身についていたため、
出て行くことに異存はなかった。
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かをりは次に行く場所はもっと都会にしよう
と考えていた。ただ、東京や大阪はまだ恐い。
名古屋は岐阜から近いので、
知り合いに会う可能性もあるから嫌だった。
どうせならもっと遠いところ。
そうだ北海道にしよう。
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# by kb1986 | 2006-07-18 19:59 | 第二章 希望

VOL.24

コギャルのミユキは可愛いらしい顔はしていたが、
喋り方はぞんざいで、
サービスもいい加減だったので
よく女将さんから注意を受けていた。
彼氏に売り飛ばされたミユキにしてみたら、
いつでもクビにしろよ
という気持ちだったのだろう。

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そしてあっという間に3年の月日が経過した春、
女将さんに呼び出されたかをりは
この温泉旅館を出て行くことを許可された。
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# by kb1986 | 2006-07-18 00:46 | 第一章 夢

vol.23

お座敷に呼ばれることはない、
性行為専門の枕芸者となったかをりは、
少ないときで1人、多いときで一日5人の客と寝た。
最初の話しでは週一で
お休みをもらえることになっていたハズだが、
頼まれれば嫌とは言えなかった。
たまにお客さんがまったく来ないときだけが
かをりの唯一の休日なのだ。
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お給料は月に手取りで13万円くらい。
少ないな、とも感じたが、
別に使う宛てもないので、そのほとんどを貯金した。
旅館にはかをりの他にも二人の枕芸者が存在した。
一人はコギャル風のミユキ。
もう一人は30歳の桂子という女性。
桂子は自分では30歳と言っていたが、
見た目はもっと老けていて、
どこかに自分の子供がるらしい。
いつも「お金さえあればこんなところね~」
が、口癖だった。
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# by kb1986 | 2006-07-16 23:37 | 第一章 夢

vol.22

「あたしも何度か逃げようかと思ったんだけど、
大概駅に向かう途中か、駅で連れ戻されちゃうのさ、
不思議だよね」

この片田舎の狭い街の中で誰かが
監視しているのだろう。
また、この街を脱出したところで
かをりには佐賀の施設しか帰るところは無い。
どうせ帰ったところでまた旅館に戻されるのがオチなのだ。
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かをりは諦めることにした。
どうせ社会に出たとしても中卒で
なんの取り得もない自分には
まともに働ける場所などありはしないだろう。
それなら、ここで売春婦として生きていくのも
悪くはないかもしれない。

そんな風に考えて自分を納得させるのだった。
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# by kb1986 | 2006-07-15 01:35 | 第一章 夢

vol.21

「売られた」
正直耳を疑った。
私を可愛がってくれていた先生たちが私を売った?
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衝撃だった。だが、どう考えても
間違いであるハズもなかった。
その日、旅館から施設に何度も電話をかけたが
何回かけても話し中。
そして一ヶ月経っても電話が繋がることはなかった
(電話に何らかの規制がかけられていたのだろうか)
逃げ出すことも考えたが、
なにしろ旅館のある場所が山の中で、
駅に行くだけでも相当の距離がある。
また駅に辿り着いたとしても汽車は
1時間に一本しか出ておらず、
ミユキさんの話しでは汽車に乗る前に捕まってしまうらしい。
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# by kb1986 | 2006-07-14 14:52 | 第一章 夢

VOL.20

私がこの旅館で売春婦のようにして働かされるのを
施設の先生方は知っていたのだろうか。
まさか知らないわけもあるまい。

だが、その疑問も午後に出逢った隣部屋の
ミユキさん(18歳)の話しを聞いてすべて氷解した。

「ああ、アンタね売られたんだよ施設の人にさ」
と、金髪でコギャル風のメイクをした
この女性もかをり
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と同じ境遇だと言う。
「あたしの場合は彼氏に連れてこられたんだけど、
彼氏の借金のカタにここで働かされてるってわけ。
ホント馬鹿らしいと思わない? 」
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# by kb1986 | 2006-07-13 19:28 | 第一章 夢

vol.19

「うん、すぐ馴れるから」と、
岩田さんは言いながら布団を敷いてくれた。
旅の疲れとビールのアルコールでその日は
すぐに深い眠りについた。
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 次の日10時頃目覚めると、
部屋の前に朝食が用意してあった。
相当疲れていたのか、泥のような眠りに落ちていた。

昨日一日の出来事が走馬灯のように浮かんできたが、
どうも現実感が薄く、
あれが本当にあった出来事なのかと疑いたくなった。
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# by kb1986 | 2006-07-13 00:55 | 第一章 夢

vol.18

これは男のテクニックがうまかったのか、
それともかをりに潜在的なセックスの
素質があったのかはわからない。
だが、フェラチオもアナルに指を入れたりされるのも
自然と受け入れていた。
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男はかをりの中へ二回射精した。

ひと通りの性行為が終了すると、
待ってましたとばかりに岩田さんが現れ
(どこかで監視していたのだろうか)かをりを部屋に戻してくれた。

「お疲れさま…全然大丈夫だったでしょ」
「あ、あたし…」
正直頭がボ~っとして、
自分でも何を言いたいのかよくわからなかった
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# by kb1986 | 2006-07-12 16:49 | 第一章 夢

vol.17

かをりはこのときすべてを理解したのだった。
女将の言ってた男性客の相手とは
“セックスで相手を喜ばせること”だと。

そのあとは隣に用意されていた布団に
連れて行かれ3時間以上に渉って
ありとあらゆる陵辱的な性行為を体験させられた。
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当然ながらかをりはこのときまで処女だった。
ペニスが膣に挿入されるのも最初は痛かったが、
途中からは快感に変わっていくのを感じた。
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# by kb1986 | 2006-07-09 11:01 | 第一章 夢

VOL.16

顔を向けると男の酒臭い息と、油ぎった肌が
リアルに視界に入ってくる。
こんなに近くで男性の顔を見たのは初めての経験である。

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すると突然男はかをりの唇を奪った。
それはかをりにとって始めてのキスであった。
すごく嫌で抵抗したかったが、
この場の雰囲気を壊すのが恐くて、黙って目を閉じた。
男の生暖かい舌が口中に侵入してくる。

これがキスなんだ。と、改めて反芻していたが、
正直それ以上冷静ではいわれなかった。
男の手がスカートの中へと入ってきた。
もう抵抗したくとも身体が電気に打たれたように痺れていうことを効かない。
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# by kb1986 | 2006-07-08 11:50 | 第一章 夢

vol.15

本当にこんな仕事でいいのだろうか。
第一私の今の格好は佐賀の施設を出るときに
着ていたセーターとスカート。
とても接客するような服装ではない。

しばらく女将さんと男は雑談を交わしていたが、
30分もすると「それじゃ」と、
立ち上がった。二人になると途端に
会話が成立しなくなる。
薦められるままにビールを飲んだが、
テレビの音だけが寒々とした空間に響いていた。

「今日が初めてなんだってね」
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誰から聞いたのか、
この男はかをりについて知っていた。
顔を向けると男の酒臭い息と、
油ぎった肌がリアルに視界に入ってくる。
こんなに近くで男性の顔を見たのは初めての経験である。
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# by kb1986 | 2006-07-07 07:09 | 第一章 夢

vol.14

それにしても薄暗い廊下である。
人の気配もあまり感じられず、
温泉旅館がどういうものか知らなかったかをり
にはこれも一つのカルチャーショックだった。

2階のある『蘭』と書いてある部屋の前で、
中に入るように促がされる。
「こんばんは~」
カラリと襖を開けると浴衣を着た40代中頃くらいの男が
料理を食べながらビールを飲んでいた。
「おう、遅いじゃないか」
中年太りのその男はすでに赤い顔をしている。
「すいませんな~、ちょっと用事があって出てまして」
「待ちくたびれたよ」
軽口を叩くということはこの男、女将と顔見知りか、
常連客ということなのだろうか。
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「まぁこっち座りなさい」
男に促がされ密着するほど隣に座らされる。
「かをりちゃん、お酌してさしあげて」
「はっはい」
こんなんでいいのだろうか。
まるで狐につままれたように、
馴れない手つきでビールをつぐ。
本当にこんな仕事でいいのだろうか。
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# by kb1986 | 2006-07-05 23:33 | 第一章 夢

vol.13

まさか、今日の数時間前に中学校を卒業したばかりのあたしが。
いや、そんなことあるわけない。
想像しては打ち消した。
しかし、意を決してダイレクトに聞いて見る。
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「あの、男性のお客さんの相手ってどんなことをするんですか」
宮路さんの目が一瞬鈍い光を灯したような気がする。
「あなたは男性のお客さんに望まれるままにしていればいいのよ」
一転、今度は子供を宥めるような口調で言った。
「何も心配する必要なんかないの・・・
わからないことがあったら他のお姐さんに聞きなさい」
と、言って立ち上がった。
そして私に後ろからついてくるように命じると、
スタスタと本館の方へ歩いていく。
私は黙って宮路さんの後ろを歩いて行った。
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# by kb1986 | 2006-07-04 15:57 | 第一章 夢

vol.12

「え~と、あなたがかをりさんかい? 」
その女性は宮路さんと言って
ここの旅館の女将さんだということだ。
背が低く、痩せていて、
どこか神経質そうでおまけに厳しい口調をしていた。
岩田さんとは百八十度違うタイプの人だ。
「じゃ、もう今日から働いてもらうけどいいね」
「は、はい…」

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とても言い返したり、
不満を漏らしたりはできないような威圧的なものの言い方だった。
「とりあえず、あなたには男性のお客さんの
相手をしてもらいます。
勤務時間は夜の8時から明け方まで、
お休みは基本的に週一回」
ひと通り教えてもらっても、よくわからなかった。
男性のお客さんの相手とはいったいどんな仕事なのだ。
なんだか不安で心臓を鷲掴みされたような気分だった。
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# by kb1986 | 2006-07-04 00:03 | 第一章 夢

VOL.11

いままでの施設生活では一人で個室をもつことなど
なかったかをりにとって、この四畳半という空間が
とてつもなく広い空間に感じられた。

今あるのは手持ちで持ってきたスポーツバッグ一つと
電気ストーブだけ。身の回りのものは
明日届くということだったが、この部屋で一人でいるとき、
どうやって時間を過ごそうか不安になるのであった。
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 それにしても岩田さんは遅い。
「ちょっと待ってて」と、
出て行ったきり2時間以上経つではないか。
いささか不安になり、お腹もすいてきた。
午後8時、コンコンと扉がノックされ50代くらいの女性が入ってきた。
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# by kb1986 | 2006-07-03 04:00 | 第一章 夢

vol.10

まず案内されたのはかをりがこれから暮らしていく寮。
寮と言っても旅館の一階奥に併設されている部屋で、
ここには従業員が数名住んでいるという。
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だいたいかをりは仕事の内容はおろか、
給料や待遇について何も聞かされていなかったのだ。
「ここがかをりさんの部屋よ」
殺風景な四畳半の部屋で電気ストーブだけが
赤い火を灯していた。
「ちょっと待っててちょうだいね」
岩田さんはそういい残して扉の向こうへ消えていった。
本当に何も無い部屋、テレビくらいは見たいのに…と、
つい不満を口にしそうになったが、
中卒の私を快く雇ってくれて、
寮まで提供してくれたことを考えて我慢することにした。
テレビくらいしばらくしてお給料をもらったら買えばいいのだ。
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# by kb1986 | 2006-07-02 04:49 | 第一章 夢

VOL.9

列車がとある駅に到着すると迎えの車は
すでに駅前に停まっていた。
ここからさらに車で15分ほど走るらしい。
山並みにはまだかなりの雪が積もっている。
結構田舎なんだ…と、安心する反面、
都会に対する憧れもあったので
少しだけガッカリとするかをりであった。
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旅館はかをりが想像していたよりもこじんまりとしていて、
古く、建築から相当の年月が経過していることが想像された。
温泉旅館ってこんな感じなんだ。
テレビの温泉番組などで見るような豪華さは微塵もない。
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# by kb1986 | 2006-07-01 07:57 | 第一章 夢

vol.8

当然ながら本州で3月はまだまだ春には遠い。
名古屋で乗り換えるとき厳しい寒さを感じた。
すでに夜の帳は降りていたが、
名古屋駅はかをりが今まで体験したことの
ないような混雑でごった返していた。これが都会か。
「名古屋は都会でしょう、岐阜県はもっと田舎だから大丈夫よ」a0079793_13463026.jpg
戸惑うかをりを心配したのか、岩田さんが話し掛けてくる。
このとき初めてかをりはこれからの生活に対する
不安感が腹の奥底から感じてきたのであった。
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# by kb1986 | 2006-06-30 13:47 | 第一章 夢

VOL.7

愛想のいい初老の女性は岩田と名乗った。
女性従業員を取り仕切る仕事をしているらしい。
「わからないことがあったら全部私に聞けば大丈夫だから」
と、言ってくれたが、
すべてわからないことだらけで、
いったい何から聞いていいのかわからなかった。
車中一度「どんな仕事なんですか…」
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と、聞いてみると岩田さんは
「うん、旅館でね、お客さんを相手にするお仕事よ」
と言ったきり深くは教えてもらえなかった。
かをりは漠然と配膳係りのようなのを想像していたのだが、
もし芸者のような真似をさせられたら嫌だなぁと考えた。
だが、テレビなどで見る芸者さんたちは
厳しい稽古を積まなければ客前に出られないというのを思い出し、
勝手に不安を打ち消すのだった。
もちろんそれはかをりが芸者というものを
本当に理解していないからだけなのだが。
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# by kb1986 | 2006-06-30 01:15 | 第一章 夢

vol.6

佐賀から岐阜へ。在来線、
新幹線を乗り継ぎ6時間以上の長旅である。
かをりはこの年齢になるまでほとんど佐賀県を
出たことがなかった。唯一の旅行といえば長崎への
修学旅行だけ。a0079793_2032590.jpg
そういわれれば九州を出たことがないことに気付く。
そんな楽しいハズの旅も期待と不安、
緊張と戸惑いで車中のことはほとんど憶えていない。
新幹線がすごく早かったという印象だけである。
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# by kb1986 | 2006-06-29 20:32 | 第一章 夢